YABESOYの生活エッセイ  


住んでいる逗子のことやアートやデザインのこと、読んだ本など日記含め、いろいろ。


 


「ブラジル先住民の椅子」展に行ってきた。
会場は元・朝香宮家のお屋敷、東京都庭園美術館。
アール・デコ様式の装飾たっぷりの洋館である。

展示されているのは、ブラジル北部の先住民たちが作った椅子で、
これはブラジルのアート系の出版社のコレクションである。

展示は大別して3つにわけられる。歴史が古い順に、
(1)伝統的な椅子
(2)シャーマンの椅子
(3)アートの椅子
となる。

(1)伝統的な椅子は、すごくシンプルな台のような低座椅子だが、
よく見るとちょこちょこっと模様がある。
この模様には自然のパワーがぎゅっと詰まっている。
村の偉い方が座るための椅子であり、シンボルでありつつも、実用的だ。

(2)シャーマンの椅子は、シャーマンがお祈りをする際に使う椅子。
模様を超え、動物の形をとらえた椅子で、
お祈りの際にシャーマンが腰かけると、モチーフとなった動物や、
生命の力を得ることができる。
熱帯雨林の自然環境を敬い畏れた先住民の祈りが込められている。

(3)アートの椅子
お祈りや伝統といったこれまでの流れを踏まえつつ、「現代」の先住民が作っている椅子。
シャーマンの椅子の頃よりも、「椅子<<<動物」な仕上がり。
動物彫刻に近いが自然な環境で生き物と向き合う彼らが作る彫刻はすごく生き生きしている。
しかし、素晴らしい椅子たちだった。キュートなのに、あざとさがない。
時にシンプルに、時に誇張をしているのに、全然嫌なデフォルメじゃない。
実際、森で出会っているからこそだろうか。野生動物と想像力という副題を強く感じた。

先住民たちは、先人たちの知恵や伝統を継承しつつ、
純粋に「アート」を生み出しているのだそう。

西洋建築の象徴のような場で、西洋人によって植民地化された先住民の展示をすることに
対する疑問の声がSNSでちらほら流れていたが、現在の先住民はもはや、
過去ではなく自分の時代を生きている。

先住民の芸術は、感傷、エキゾチックな味付け、珍しさ、変わらないというストーリーを求められてがちだ、
それに彼らが応えるするのは簡単だけど、
伝統ではなくチャレンジすることを椅子づくりをするブラジル先住民達は選んだ。

会場構成は伊東豊雄さんによるものだが、先住民から感じるものがあったのか、
「脱・エキゾチック」にチャレンジしている。
新館なんて、音楽が流れ、ホワイトで、プレーンな、全然エキゾチックじゃない展示空間。
ビーズクッションに寝転ぶことが可能な、平和な空間だ。

「西洋建築で植民地の人のものを展示だなんて」というのはなんとなく作品だけでなく
先住民に対する差別意識を感じる。
でも実情を知らなかったら私もそんな風に
「ちょっと知ったかぶり」なことを思っていたのだろうな。
なんだか最近、世の中そういうこと、多い気がする。

実物を見るからこんなふうに言えるだけで。
これからも知った気にならずに、きちんとものをみて、考えたいなと、
大きすぎるビーズクッションに飲み込まれながら思っていると、
サルの椅子と目があった。
埋もれてうまく動けない私をじっと見ている。
なんだか私も動物椅子になった気分だ。


【展示情報】
展示名:ブラジル先住民の椅子 野生動物と想像力
会場:東京都庭園美術館
会場構成:伊東豊雄建築設計事務所
会期:2018年6/30~9/17
公式サイト




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