YABESOYの生活エッセイ  


住んでいる逗子のことやアートやデザインのこと、読んだ本など日記含め、いろいろ。


 


広尾のKaikaikiki galleryで開催されている上田雄児さんの個展「ひびき合う土の記憶」を見た。

会場には陶器でできた大小さまざまな謎の物体が並んでいた。
花入れだったり、器だったり、オブジェだったり、色々ある。
それが何のためのものか、私はあまり興味がわかなかった。

そんなことより、海辺を歩いているときに見かける謎の物体に似ている!というワクワクの勝利。

逗子に住んで以来、逗子海岸の漂流物…海を漂い、様々なものがまとわりついて、複雑な層になっているもの、いびつだけど確かな力強さがあるもの…を拾うのに夢中なのだが、あれにそっくりのパワフルさなのだ。

机に飾るからと、ゴシゴシこすって洗うと、色々なものがいともたやすくこそげ落ちてしまう。
あんなにごつかったのに、そんな簡単に落ちちゃうのか。謎の物体のまま飾る。


上田さんの作品は近所にある様々な土を拾って、重ねて、盛り上げて、えぐって、作られている。

まるで海の宝物。
その繊細さと強さが好きだから、指で触れたい気持ちをぐっと抑えた。

実は初日だったためか、会場には上田さんとスタッフがいて、まだ小作品の設営をしていた。
畳のあるフロアで小さめの作品をニコニコしながら並べる上田さん。
もはや開催しているけれど、全然バタバタしない。
にこにこ。なかなかに自由そうな風貌と雰囲気を纏っている。
是非、展覧会パンフレットの表紙やウェブサイトをご覧いただきたい。
ああいう作家写真で気負わない、そのままの姿っていうのはレアだ。

そのパンフレットやウェブサイトにでている
村上隆による「開催に際して」のメッセージやエピソードからも、
「あ、上田さんは自由なんだろうな」というのがすごく伝わってくる。

「お金のことには詳しくない」し、びっくりするほどなにも考えていない。
いいじゃないか、と思う。

セルフプロデュースやらマネジメント、売り込みが大切な、イマドキの若手作家のアートシーン。

「アーティストにとって、
一番大事なのはコンセプトを上手に語る、
では無く、
作品にそのすべての答えが出すことが出来るかどうかだ。(略)」
と語る村上隆に、

「素晴らしい作品群!感動しました。」
「こういう芸術作品に出会いたくて、出会うための場を作るギャラリー事業をやっているのだが、その立場冥利に尽きる体験」
と言わせるのはすごいなと思う。

「実はね、、、」で、1を6くらいに「映え」させることも多いこの世の中で、
点なんぞ知らん!おりゃあ!どりゃあ!かっこいいじゃろう!と、ニコニコしながら、
とんでもない渦潮を巻き起こし、砂浜にゴロゴロと作品を打ち上げさせていた。


【展示情報】
展示名:ひびき合う土の記憶 上田勇児
会場:Kaikaikiki gallery
会期:2018年11月27日 – 2018年12月10日
時間:11:00 – 19:00
閉廊:日曜・月曜・祝日
公式サイト




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